2026年10月10日土曜日

お金を貯めれば、それでいいのか。

──資産形成の「その先」を考える


いま、「お金を増やす」ことへの関心が、

これほど高まった時代はないかもしれない。


NISAをはじめよう。

インデックス投資をしよう。

老後に備えよう。


社会全体が、声高にそのメッセージが

強調されている。


間違いとは言わない。

むしろ正しい。


でも、その先のことを、

考えたことがあるだろうか。


お金を貯め終わったとき、

自分は社会に何をしているのか、と。


えんやす村で考えてみる


少しずつ、人が減っている。

100人いた村人が、やがて80人になる。

いわゆる「8がけ社会」である。

この80人で、

1日300個のパンをつくり、運び、売り、

社会を回さなければならない。

たとえばこんな内訳だとしよう。

--------------------------------------------

小麦などの原料をつくる人:10人

パン工場で働く人:10人

物流を担う人:10人

販売する人:10人

オフィスで働く人:20人

金融・投資で生活する人:20人

--------------------------------------------


想像してみてほしい。


農業をする人が足りなくなったら?

パンをつくる人が減ったら?

運ぶ人、売る人が足りなくなったら?


当然、パンの供給は減る。

でも、

パンを食べたい人の数は簡単には減らない。


すると、パンの値段は上がっていく。

インフレの到来だ。


ここで、厄介なことが起きる。


パンをつくる人、運ぶ人、売る人たち自身が、

「パンが高くて買えない」

という事態に陥るのだ。


一方で、

画面の前で金融資産を増やし続ける人たちは、

パンが高くなっても買い続けることができる。


投資は社会に必要な資金を供給する役割をもつ。

ただ、もし社会全体で

「生産するヒト」より、

「資産を持つヒト」ばかりが

増えたらどうなるか?


社会に最も不可欠な仕事をしている人が、

その仕事が生み出す

商品すら満足に買えなくなる。


これは、

8がけ社会が進んだ先に、十分起こりうる話だ。



「社会の役に立つ」とは何だろう


医師。看護師。介護士。

農家。漁師。建設作業員。物流ドライバー。


こうした仕事が社会の根幹を支えていることは、

間違いない。

誰もが認めるエッセンシャルワーカーである。


しかし、「社会の役に立つ」ことは

それだけではない。


企業を経営すること。

・人を育てること。

・新しい技術をつくること。

・未来の産業に投資すること。

・地域でお店を続け、灯りをともし続けること。

・税金をしっかりと負担すること。

・若い世代に経験や知恵を伝えること

・子育て/家族介護

・地域活動

・ボランティア


こうした営みもまた、社会を支える柱だ。


大切なのは、自分が持っている

時間・お金・知識・能力を使って、

「いま、社会に必要なものを生み出しているか」


その一点につきると思う。


「自分は何を買えるのか」ではなく、

「自分は社会に何を提供できるのか」。



お金の向こう側にいる人を見る


株価が上がる。

円安になる。

税金が上がる。

金利が上がる。


こうした日々のニュースに接していると、

私たちはどうしても

「お金」の動きばかりを目で追ってしまう。


しかし、突き詰めて言えば、

お金の向こう側には常に「人」がいる。


8がけ社会で本当に足りなくなるのは、

お金ではなく**「人」**だ。


資産形成は「目的」ではなく「手段」だ。


英語をマスターすることが目的ではなく、

その語学力で何をするかが本質であるように。


お金を貯めることが目的ではなく、

そのお金で、社会に何を返すかが、

本質なのだと思う。


金融資産を築くこと

――それ自体はもちろん大切だ。


でも、それが実現できたとき、

自分は社会に対してどういう貢献ができるのか。

そこまでセットで考えておきたい。


だとすれば、問いはシンプルだ。


あなたは、

その「生み出すヒト」の側にいるか。